人類のエネルギー消費は、特に20世紀以降、飛躍的に多くなっています。
限りあるエネルギー資源を有効活用して、未来に向けたエネルギー供給をどのように行なっていくのか、
今から考えていくことがとても重要なのです。なぜなら今しか考えられないからです。
人類とエネルギーの歴史を振り返りながら一緒に考察してみましょう。
【エネルギーと文明崩壊の歴史】
現在、私達は家庭における電気、ガス、自動車におけるガソリンや軽油、LNG、
発電における重油や原子力、水力など私たちは、日々の生活の中でさまざまなエネルギーを利用しています。
人類が初めて手にしたエネルギーは火でした。やがて、文明の発達と科学・技術の進歩により、使うエネルギーの種類と量が次第に増えると共に我々の祖先は住む場所とライフスタイルを変えて生き延びてきました。
人類のエネルギー消費は、特に20世紀以降、飛躍的に多くなっています。限りあるエネルギー資源を有効活用して、未来に向けたエネルギー供給をどのように行なっていくのか、今から考えていくことがとても重要です。なぜなら今しか考えられないからです。
人類とエネルギーのかかわり(出展 総合研究開発機構 エネルギーを考える)
地球上に人類が誕生したのは、諸説ありますが今から約400万年前のことと言われています。 人類が初めてエネルギーを利用するようになったのは、今から約50万年前のことで、利用したエネルギーは火。 火は主に調理や、暖房用などごく限られた用途で使用されていました。
その後、火は土器や鉄器などさまざまな道具をつくることにも利用されますが、現代に比べれば微々たるものです。
現在から約1万年前になると、人間は定住を始め農耕を営み始めると、新たなエネルギーを利用し始めます。農業用の動力源として牛や馬を、さらに、単純労働を風力や水車などを利用して自然のエネルギーに任せるようになりました。
労働力を持つ者に富と権力が集まるため、各地でこの新たな労働力の奪い合いが始まります。とは言っても当初は労働力としては人間や牛、馬のほうが便利であるため、当初は奴隷、牛、馬および農地がその対象です。
一人あたりのエネルギー消費が少なくても、都市化が進めばそれだけ同一地域内でのエネルギー消費は増大し、主要なエネルギー源であった木材は需要に供給が追いつかず、周辺の森林の荒廃を招きやがて都市を滅亡へと導きます。
今から5千年前から2千年前にかけてシュメール、黄河、ギリシアなど様々な文明が滅びました。森林(エネルギー)の限界が都市の発展の限界、人口の限界を決めていたといっても過言ではありません。
16世紀に入ると、それまでの木炭に代わって石炭が熱エネルギー源として利用されるようになりました。 その後、ワットが1765年に蒸気機関を発明し、工場の動力源のほか、蒸気機関車や蒸気船など、さまざまな分野に応用されました。
この発明により、それまでの牧畜や自然エネルギーの利用に比べて生産力が向上し、石炭の消費量が飛躍的に増えることになります。この石炭という奴隷を駆使する事により人類全体の人口が急激に増大し始めます。イギリスを中心に起こった産業革命です。
1859年に、アメリカで石炭より安く掘削できる石油の採掘が開始され、大量生産が可能になると、その利用方法も急速に発展します。 さらには、1950年代に中東地域やアフリカに相次いで油田が発見され、エネルギーの主役は石炭から石油へ移行しました。これをエネルギー革命といいます。
大量に安く供給された石油は、さまざまな交通機関や暖房用熱源、火力発電の燃料、化学製品の原料として、その消費量は飛躍的に増えました。
1970年代に起こった二度の石油危機は、石油に大きく依存していた世界の経済に大きな打撃を与えました。 日本でも石油というひとつのエネルギー源に頼りすぎる危険性を思い知らされ、原子力、天然ガス、新エネルギーなどエネルギー確保の分散化が図られ始めます。
私が太陽光発電を志すきっかけとなったサンシャイン計画が立てられたのもこの頃です。当時の通産省が発案したものでサハラ砂漠に大規模な太陽光発電所を作り、そこで作られた電気エネルギーを水の電気分解で水素に変えて日本に運んでくるという壮大なものでした。
(出展 電気事業連合会HPより BP統計2013より作成)
世界中で様々な取り組みが進んでいますが、この図のように世界の一次エネルギー消費量は増大する一方です。世界中がエネルギーを節約すればいいという意見もありますが、先進国と途上国の一人あたりエネルギー消費の割合は10倍以上の差があります。私たち日本人がエネルギーを1/10しか使わない生活が出来るでしょうか。
これは事実上不可能です。電気をこまめに消したり、マイカーを使わずにバスや自転車を使うレベルでは何の役にも立ちません。先ほどの「人類とエネルギーのかかわり」にあったグラフのとおり私達は原始人の70倍以上のエネルギーを消費しています。
食料の生産、物資の輸送など、機械を使うことによって原始人と比べて現代人は何倍もの効率で仕事を行うことが出来ます。昔であれば100人いればほぼ全員が狩猟や農作業に従事していましたが、現代人は原油などの見えない奴隷を駆使することにより大多数の人々が第一次産業(農業、漁業など)以外の職種についています。
エネルギーが不足すれば衣食住に不自由することになります。両親や幼い我が子を病気で失う確率も激増します。何より資源が限られた際には争いが起こることは過去の歴史が何度も証明してくれています。
人類はエネルギー不足の代償として何度も大量の血を流して来ました。今回だけはちょっとした我慢で済むと思うほうが不自然だと思いませんか。
【増やせるエネルギー源としての太陽光発電】
可採年数又は可採埋蔵量という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
天然資源には石油、石炭、天然ガス、原子力と様々なエネルギー源がありますが、可採年数とは今と同様の状態で掘り続けた時にあと何年で枯渇するかを表した数字です。
エネルギー資源の可採年数(経済産業省HPより)
まだまだけっこう余裕がありそうに見えますが・・・ここで疑問を感じた方は鋭いです。私が小学生の頃、石油の可採年数はあと40年と言われていました。このグラフでもまだあと約40年となっています。1年あたりの世界の石油消費量は増えているのに不思議ですよね。
これは各種採掘の技術が向上したことによります。より深い所、より採掘が難しい場所のエネルギー資源を採掘できるようになってきた結果です。このまま技術革新が進みつづければエネルギー資源の採掘だけでエネルギーは賄いきれるように思えてしまいます。
しかし、これはあくまでも可採埋蔵量です。例えば1バレルあたりの原油の原価が1ドルでも100ドルでも変わりません。実際の所は100倍とまではいきませんが、原油採掘の原価は10倍以上に上がっていると言われています。
当然このことに産油国は気づいていて、対応策を検討しています。例えばサウジアラビアの国営石油会社であるサウスアラムコ社は昭和シェル石油の大株主となっており、その100%子会社であるソーラーフロンティアのパネルで大規模な太陽光発電所を建設しています。
また、アラブ首長国連邦のアブダビには再生可能エネルギーでゼロ・カーボン(二酸化炭素)ゼロ・エミッション(廃棄物)を目指す都市、マスダール・シティの建設が進んでいます。
では太陽光発電の可採年数はと言えば・・・聞いたことが無いですよね。燃料を必要としない太陽光発電はもちろんエネルギーを消費しません。むしろ太陽光発電所を設置するのに要したエネルギーの10倍以上のエネルギーを回収することが出来ます。
各種発電方法のエネルギーペイバックタイム(出展 NEODのHPより)
こちらは各種発電方法において発電所を設置するのに使用したエネルギーを何年で回収出来るか(エネルギーペイバックタイム)を表しています。最新の太陽光発電が約1年から2年。水力発電や風力発電などは更にエネルギー回収が早いですね。
しかし、太陽光発電以外の発電方法は導入までに時間がかかります。また、火力や原子力といった方法では当然ですがエネルギーペイバックタイムは無限大、つまりエネルギーを回収することは出来ません。
太陽光発電所から作られたエネルギーで太陽光発電所を作れば理論上、短期間で膨大なエネルギーをリスク無しで生産することが出来ます。ただクリーンであるだけではなく、エネルギーを短期間で爆発的に増大させることが出来るのが太陽光発電の一番の魅力とも言えます。
【20年後の買取価格と資産としてのエネルギー】
固定価格買取制度で太陽光発電は発電した電力の売電価格が余剰買取(10kW未満)で10年間、全量買取(10kW以上)では20年間、政府によって保証されています。では20年後の買取価格はゼロになってしまうのでしょうか。
未来のことなので絶対はありませんが、結論から言えばエネルギーは今後ますます需給が逼迫してくることが予想されます。また、通貨の価値が下がっていく事も考慮すると20年後の買取価格はむしろ上がっているかもしれません。
そもそも円の価値、お金の価値とは何でしょうか。言うまでもなく円とはお金の単位です。通常、単位には明確な定義が決められてきました。例えば1kgとは水1リットルの重さ(現在では国際キログラム原器の重さ)、1calとは1グラムの水の温度を標準大気圧下で1℃上げるのに必要な熱量です
円には明確な基準はありませんでしたが第二次大戦後に360円が1USドルと、そして35USドルが金1オンスと定められ間接的に円は金の価値によって保証される事となっていました。
しかし1971年、財政赤字に苦しむアメリカのニクソン政権が突然、金とドルの交換を停止します。これをきっかけに変動相場制が定着し、ドル、円に限らず全ての通貨が明確な価値の基準を失いました。
日米欧の通貨供給量推移(2008年9月を100とした数字)
現代では先進各国が財政赤字で苦しむ中、争うように通貨供給量を拡大しています。例えば円に対してドルの供給量が増大すれば1ドルの価値は円に対して低下して円高が進みます。近年はドル、ユーロ共にそれぞれ中央銀行が金融不安により通貨供給量を急拡大させたため、日本は極端な円高に苦しんできました。
安倍政権は日銀に対しかなり強硬な姿勢で通貨供給量の増大を要求し、日銀はここまで市場に200兆円以上を供給してきました。2012年には80円を割った日本円もいまでは100円台を回復しています。対ドルで言うと2年間で私達のタンス預金は25%価値が下がったことになります。
このような極端なケースは少ないものの、歴史的に見てインフレ率は平均して年間2〜3%程度だそうです。仮に3%と考えると、タンス預金をしておいた際に10,000円の現金の価値は翌年は9708円に、さらに翌年は9425円に下がってしまう事と同意ですね。
短期間で極端なインフレが起こる可能性はまだそう高くはないと思われますが、現代ではなるべく利回りのいい投資に回さなければ何も使っていないのに貯金が事実上目減りしてしまう可能性が高くなっています。
では何に投資すればいいか。相場は水物ですから株式や先物に投資するのは余裕がある人がやることだと思います。特に金は非常に高騰し続けていますが、実際に売買されている量と相当の金は世界に実在しないと言われています。
安定した投資といえば国債が思い浮かびますが1%以下の金利では投資する気も起きません。では国債と同等にリスクが低く利回りがいい投資先があれば・・・などという都合のいい話は普通は中々ありません。しかし、現在の日本の太陽光発電はそれに当たるのです。
現在の日本の太陽光発電における電力買取価格は、FIT(電力の固定価格買い取り制度)が先に導入されていたイタリアを参考にしていると言われてます。イタリアと同じくIRR(内部収益率)が6%となるように計算した結果、初年度の買取価格が42円に設定されました。
しかし、イタリアと日本では大きな違いがありました。当時、国内の金融機関に半ば強引に国債を買わせ、国債の金利をほぼゼロに抑えている日本に、国債の信用が低くが金利が約5%のイタリアの仕組みをそのまま持ってきてしまったのです。
投資先が国と一般企業では信用のレベルが全く違います。イタリアでは国債に投資するより、太陽光発電に投資する方が1%だけ信用が低くなっていますがほぼ同等です。可動部もないため故障も少ない太陽光発電は非常に安定した事業だからです。
日本の場合で考えてみます。国債の金利が0.1%とすると国債と太陽光発電の利回りで6.5%も差を出してしまっています。地震等のリスクを保険で保証しなくてはならない事を考えてもイタリアと比べてあまりにも大きな差異です。太陽光パネルの価格がなぜか欧米向けの価格より高いジャパンプレミアムとなっている事を考慮しても十分魅力的な数値といえるのではないでしょうか。
FIT導入当初こそ消極的だった金融機関もかなり融資には積極的になってきました。買取価格は下がっているものの、上手く事業計画が通れば融資によって初年度よりもレバレッジを効かせる事ができる可能性が十分にあります。
【太陽光発電ムラ50万人計画】
これだけメリットが多い太陽光発電ですが、福島第一原発事故直後は強い追い風が吹いたものの、その後はあまり推進するような政策が出てきていません。市民の6割が原発の廃止を望みながらなぜ原発は再稼働せれようとしているのか。そしてどうすればこの流れを止めることが出来るのか。
原発を推進しているものは間違いなく利権です。これは特定の誰かを儲けさせるといった浅いものではなく、数十年掛けて業界全体を儲けさせるように作られてきた仕組みなので、誰か一人の手で止めるのは非常に難しいことでしょう。
そこで必要となるのが民意ですが自分に強い利害関係のない事に対し、反対をし続けるのは非常に難しいことです。既得権を守るために行動するのと、まだ起きていない事故を未然に防ぐだけのために行動するのではどうしても後者は活動の継続性を維持することが出来ません。
ではどうすればいいか。これは農業が参考になると思います。
減反やTPPなど農業を取り巻く環境に変化をもたらす政策を実行する際に、政治家は農家の票を恐れ腫れ物に触るような扱いをしてきました。
この農家の数、調べてみると専業ではたった50万世帯ほどなんですよね。日本の世帯数が約5000万世帯。人口の1%であれだけの影響力を与えています。
もし、太陽光発電を推進させたいと強く願う世帯が専業農家と同じ数だけいて同じ方向を向くことができたら
太陽光発電の推進は更に加速されエネルギー政策はあるべき方向に進むことでしょう。
ひとりでも多くの方が太陽光発電事業に参加し、利益をだす事によりより多くの方が太陽光発電投資を推進していく。子孫が安心して暮らせる社会を作るためこのようなサイクルを出来るだけ早く作っていきたいと思っています。
この話、決して荒唐無稽な話ではありません。既に太陽光発電を導入している家庭は100万世帯を突破しています。今後新設する人向けだけではなく、既に設置した人に対してのメリットを与えるような政策提言が出来れば、太陽光発電の推進は政治に対して農業の2倍以上の力を持たせることが出来ることでしょう。
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