50kW太陽光発電所向けパネルメーカー訪問記第一弾としてソーラーフロンティアさんに行ってお話を伺って来ました。
私が帯広で計画している太陽光発電所のパネルもソーラーフロンティアを選びましたし、学生の頃に神奈川県厚木市にある研究センター(当時は昭和シェル)にも見学に行ったことがあったので何となく親近感を感じています。

お台場海浜公園駅徒歩3分にある本社から撮影。眺めが良くて気持ちがいいんです。
パネルメーカー各社にメールを送って一番最初にご連絡を下さった広報のTさんにお話を伺いました。やはり注目が集まっているせいか非常に忙しいようですが非常にイキイキしていました。
以下、伺ったことを整理して記載していきます。
【基本情報】
ソーラーフロンティアは昭和シェルの100%子会社で、CISの太陽光パネルの生産を販売をしています。元々、海外に向けて太陽光パネルを売りだそうとしている会社ですが、日本での需要が高まりすぎて現在はほぼ国内向け出荷が中心となっており、上期の生産分は全て予約済み。
生産は全て宮崎県。国内各地販売拠点の他にアメリカ、ドイツ、そしてサウジアラビアにも拠点があるます。これは親会社である昭和シェルの第二の株主がサウジアラビアにあるサウジアラムコ社である事から設けられているそうで中東、アフリカ地域にも既に参入しています。
【太陽光発電事業の歴史】
1978年のオイルショックをきっかけに太陽電池の研究開発を始めた昭和シェルは1993年からCIS太陽電池の研究開発の乗り出します。CISの研究を初めてちょうど今年で20周年ですね。
そして2005年にCIS太陽電池の事業化を決定し、2006年には昭和シェルソーラー社を設立。2007年には宮崎県に第一工場(生産能力20MW/年)を、2009年には第二工場(60MW/年)、2011年に国富工場(900MW/年)の稼動が開始。現在の生産量はほぼ1GW/年です。
ちなみに生産量で世界一位となったインリーが2.45GW。1GWだと世界順位では20~30番あたりになります。業績好調のソーラーフロンティアなら大丈夫でしょうが、上位の20社のうち、何割が来年も残っているかは・・・・。
【CIS太陽電池の特長】
CIS太陽電池の特長はなんといっても本番に強いこと。ソフトバンク社が行った各社パネルの比較実験結果が公開されています。
太陽光パネルの出力測定試験がCISには不利になっているため、同じ1kWでもシリコンのパネルにに比べて年間発電量が9%~37%ほど高くなります。噂には聞いていましたが数値を実際に目にすると驚きますね。
温度上昇に強いこと、反射光の波長域の光を拾いやすいこと、結晶系と違って面全体が受光部となるため、陰に強いなどの特性を持っています。
ソーラーフロンティア以外にもCISを作っている会社はありますが、大量生産技術がやはりいちばんの強み。生産技術というと簡単に真似が出来そうですが、どんなに優れた製造装置でも最後は使う技術者の腕にかかっています。職人の技術と一緒ですね。
ちなみに工場長さんは自らを焼き物師と名乗っているそうです。最終工程におけるアニル(加熱処理)の温度だけでも生成物の色が全く違うとか。
また、組成や製造方法の変更でさらに効率化が進められているのも大きな特徴の一つです。コストは同じまま効率を上昇させることの出来る余地がまだまだあるため、更に価格競争力はついてくる可能性があり、企業としての成長性、継続性も十分期待出来ますね。
これなら株を買っておこうと思ったのですが、公開していないため買えるのは親会社の昭和シェル株まで。それでも十分魅力的にうつりましたが、太陽光発電まにあとしては発電所そのものを優先させてなければなりません。
さらに薄膜なので加工がしやすいためフレキシブルなパネルや外壁材として使えるパネル、また、シースルーの窓に付けられるタイプのパネルも研究が進んでいます。
【CISパネルとソーラーフロンティアの未来】
あえてソーラーフロンティアのCISパネルの短所をあげるるとしたら資源の量です。CISはCopper(銅)、Indium(インジウム)、Selenium(セレン)の頭文字をとったもの。銅はともかく、インジウムもセレンも地球上に資源量が限られているため、無限に量産できるものではありません。
このあたりは当然、対策を考えていてパネルのリサイクルを推進しているそうです。元々EPT(エネルギーペイバックタイム、パネル製造時に投入したエネルギーを発電によって回収できるまでの時間)が0.9年のCISパネル。リサイクル化によってさらにEPTが短くなりそうですね。ちなみにシリコン結晶系のEPTは2年前後と言われています。
ソーラーフロンティアは太陽光パネルを製造しているメーカーの中で唯一、純粋なエネルギー会社として存在しています。オイルショックの時から36年間、代替エネルギーについて本気で取り組んできた同社の取り組みは、日本版FITでさらなる追い風にのり、さらに世界で躍進しようとしています。
先日は欧州リース会社大手のユニクレディットリースよりバンカビリティ(投資適格性)も認められました。プロジェクトファイナンス中心の欧州のメガソーラーにおいて今後、かなり有利に働くことになりそうです。
オイルショックの時に当時の通産省が立案したサンシャイン計画から始まったソーラーフロンティアのCIS事業。ぜひ日本人に応援して欲しい技術だと熱く語ったTさんの言葉が印象的でした。
話を伺う前から好きでしたが、やはり直接お話を聞くと余計にファンに成ってしまいますね。Tさん、大変勉強になりました。ありがとうございました。