「原発を取り戻す」自民党


この頃の自民党政権下の経産省による環境・エネルギー政策があまりにも近視眼的かつ非経済的*であるため、おさらいしてみたいと思います。国内向けの政策を中心にまとめ、公正を期すため、エネルギー政策の変遷をめぐる情報源は一件(首相官邸)を除くすべてを経済界寄りの日本経済新聞としました。さらに記事名が最も意図しているであろう段落を引用しました。こうして変遷をたどってみると自民党の原発推進政策がいかに滅茶苦茶なものであるか知ることができます。

 

 

民主党時代

 

2009年9月 − 固定価格買取制度導入を国際宣言

これは、我々が選挙時のマニフェストに掲げた政権公約であり、政治の意思として、国内排出量取引制度や、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入、地球温暖化対策税の検討をはじめとして、あらゆる政策を総動員して実現をめざしていく決意です。
首相官邸ホームページ. “国連気候変動首脳会合における鳩山総理大臣演説 ( ニューヨーク).” 平成21年9月22日. http://www.kantei.go.jp/jp/hatoyama/statement/200909/ehat_0922.html

 

2012年1月 − 40年廃炉ルールを法定化

細野豪志原発事故担当相は6日、東京電力福島第1原子力発電所事故を踏まえた原子炉等規制法など関連法改正案の概要を発表した。
運転開始から40年を超えた原発を原則廃炉にする「40年運転制限制」を導入。原子炉の「寿命」を初めて法律で定める。                                                     日本経済新聞. “原発は原則40年で廃炉 通常国会に法案提出へ 細野担当相、概要を発表.” 2012年1月6日. http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS06030_W2A100C1EE2000/

 

 

2012年5月 − 国内の全原発を停止(1970年以来42年ぶり)

国内の原子力発電所で唯一運転している北海道電力の泊原発3号機(北海道泊村)は5日深夜、定期検査に入り発電を停止する。政府は昨年3月の福島第1原発の事故を受け安全対策を見直すとともに、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を求めてきた。しかし地元自治体などとの協議は難航。1970年以来42年ぶりに全原発が止まる事態となった
日本経済新聞. “国内原発 5日に全て停止 42年ぶり、泊3号機検査入り.” 2012年5月4日. http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0400Z_U2A500C1MM8000/

 

2012年7月 − 全量固定価格買取制度をスタート

再生可能エネルギーの全量買い取り制度の7月1日導入を受け、メガソーラー(大規模太陽光発電所)や風力発電所の新規事業計画が全国で計200万キロワット超に達することが分かった。発電能力では原子力発電所2基分に相当し、メガソーラーと風力合計の発電能力は一気に6割増える。ただ、再生エネ急増は電気料金を押し上げる懸念もある。
日本経済新聞. ”再生エネ新設、原発2基分 メガソーラーや風力 建設費6000億円超 全量買い取り、追い風 .” 2012年6月28日. http://www.nikkei.com/article/DGKDASDD250ME_X20C12A6MM8000/

 

2012年8月 − 原子力規制委員会も「40年原則廃炉」を支持

9月上旬に発足する予定の「原子力規制委員会」の委員長候補である田中俊一・前原子力委員会委員長代理が1日、衆参両院の議院運営委員会で所信を表明した。再稼働を巡る政府の対応への批判から「脱原発」の機運が高まるなか、ゼロからスタートする規制機関のトップとして、安全確保を最優先する姿勢を鮮明にした。「40年原則廃炉」を支持するとも明言。電力会社にとっては逆風となりそうだ
日本経済新聞. “原発、40年廃炉を明言 規制委委員長候補の田中氏 安全確保を最優先.” 2012年8月1日. http://www.nikkei.com/article/DGXNASGG0102E_R00C12A8EA2000/

 

2012年9月 − 2030年代原発ゼロを提言

民主党は6日に取りまとめた原発政策を巡る政府への提言で「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」と明記した。提言では「民主党は『原発ゼロ社会』を目指す」と強調。(1)原発の40年運転制限制を厳格に適用(2)原子力規制委員会による安全確認を得た原発を再稼働(3)原発の新増設は行わない――とする原則も盛り込んだ。
日本経済新聞. “2030年代、原発稼働ゼロ可能に 民主提言 あらゆる政策資源を投入.” 2012年9月6日. http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS06033_W2A900C1MM8000/

 

 

自民党時代

2012年12月 − 2030年代原発ゼロを撤回

政府は原子力政策の見直しに着手する。茂木敏充経済産業相は27日の記者会見で、原子力発電所で2030年代に稼働ゼロ」を目指してきた前政権の方針を巡り「再検討が必要」と明言。原発の新増設についても「専門的な知見を蓄積して政治判断する」と述べ、含みを残した
日本経済新聞. “原発30年代ゼロ再検討 経産相、新増設にも含み.” 2012年12月27日. http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2702R_X21C12A2PP8000/

 

2016年6月 − 原発再稼働と40年廃炉ルール延長

原子力規制委員会は、原子力発電所の新しい規制基準を7月8日に施行する方向で最終調整に入った。法律で定めた施行期限は7月18日だが、準備が早く整ったため、規制委は7月上旬に前倒しで施行する方針をすでに示していた。施行日から電力会社の再稼働申請を受け付ける予定。長期間の停止が続いていた国内原発の再稼働に向けた審査が本格化する。施行日は19日に開く規制委の会合で示され、閣議決定を経て正式に決まる。新規制基準は東京電力福島第1原発事故の反省を踏まえ、再稼働を目指す原発に想定外の津波・地震対策やテロへの備えなどを求めたのが特徴だ。また原発の運転期間を原則40年に制限し、条件付きで一度に限り最大20年間の延長を認める制度も同時に導入される
日本経済新聞. “原発の新規制基準、7月8日施行へ 準備整い前倒し.” 2013年6月18日. http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1800D_Y3A610C1EB2000/

 

2014年9月 − 九電ショック

九州電力は19日、再生可能エネルギーの発電事業者からの送電網への接続申し込みについて可否の回答を保留する方針を固めた。
日本経済新聞. “九電が送電線接続を保留へ 再生エネ、申し込み急増で.” 2014年9月20日. http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ1904J_Z10C14A9TJ1000/

 

2014年11月 − エネルギー基本計画を閣議決定(原発を「重要なベースロード電源」と位置づけた)

政府は11日、国のエネルギー政策の指針となるエネルギー基本計画を閣議決定した。原子力を「重要なベースロード電源」と位置づけて再評価したのが最大の特徴だ。民主党政権が2012年に打ち出した原発稼働ゼロの方針を転換したが、電源全体に占める比率は示さなかった。太陽光など再生可能エネルギーを最大限、推進する姿勢を強調した。
日本経済新聞. “「原発ゼロ」転換決定 エネ基本計画、重要電源と明記 将来の比率は示さず.” 2014年4月11日. http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1100H_R10C14A4MM0000/

 

2014年8月 − 価格保証制を提案(国民負担で原発の保護・救済実施へ)

政府の掲げる脱原発依存の方針や、
「原発は安価」としてきた従来の政府側の説明と矛盾する可能性がある。価格保証で消費者の新たな負担も必要になり、世論の反発を招きそうだ
日本経済新聞. “原発の電気に価格保証制を提案 自由化にらみ経産省.” 2014年8月21日. http://www.nikkei.com/article/DGXLAS0040004_R20C14A8000000/

 

2014年11月 − 川内原発再稼働へ

九州電力川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働判断を控え、自民党が原発再稼働の環境整備に動き始めた。
安倍晋三首相は10月7日の参院予算委員会で「(規制委が安全を)確認したものは再稼働していく」と強調した
日本経済新聞. “原発再稼働、自民前面に 防災・廃炉「国の関与拡大を」.” 2014年11月6日. http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS05H2U_V01C14A1PP8000/

2014年11月 − 電源三法交付金の配分方法を見直し(再稼働に重点配分、停止は削減)

経済産業省は原子力発電所がある自治体に一律に配っている交付金の配分方式を見直す。
原発が再稼働した自治体への交付金を増やす一方、稼働停止が続く場合は交付金を減らす
日本経済新聞. “原発再稼働の自治体を優遇 経産省、交付金の見直し検討.” 2014年11月14日. http://www.nikkei.com/article/DGXKZO79680100U4A111C1EE8000/

 

2015年4月 −  1%でも原子力を積み上げようとする経産省

「原子力で20%から1%でも2%でも上積みできるかが勝負だ」。議論が始まった1月、経産省の幹部は力を込めた。
日本経済新聞. ”コスト・環境の両立に腐心 30年の電源構成案 老朽原発、フル活用.” 2015年4月29日. http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF28H23_Y5A420C1EA2000/

 

2015年4月 −  2030年のエネルギーミックスを策定(原発再稼働と太陽光導入制限)

もうひとつは再生可能エネルギーの導入目標だ。国が認定済みの建設計画が加わるだけで再生エネの比率は20%に近づく。経産省案の22~24%だと、これ以上は大きく増やせない。それでいいのか
日本経済新聞. ”経産省の電源構成案は長期展望を欠く.” 2015年4月29日. http://www.nikkei.com/article/DGXKZO86278190Z20C15A4EA1000/

 

 

(おまけ)
国民が納付した税金でSMバーに通った疑いのある経産相に日本のエネルギー政策は任せられません!

宮沢洋一経済産業相が代表を務める資金管理団体が2010年、広島市内のSMバーに政治活動費を支出していたことが23日、分かった。資金管理団体「宮沢会」の政治資金収支報告書によると、10年9月6日に広島市中区のSMバーで「交際費」として1万8230円を支出していた。
日本経済新聞. “「SMバー」に政治活動費支出 宮沢経産相の資金団体.” 2014年10月23日. http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG23H0H_T21C14A0CC0000/

 

 



(*) なぜ非経済的であるのか?

そもそも政府は「原発はコストが安い、経済性に優れている」と言いつつ、原発の優遇制度はやめないできた。それどころか、固定価格買い取り制度と同様のCfD(差額決済契約)制度の導入や核燃料再処理への拠出金など、さらなる追加優遇策を検討している。極めて矛盾した話であり、今回の試算に信用性のないことを自ら証明しているようなものだ。
東洋経済. “経産省案「原発比率20~22%」は非現実的だ どうする電源構成<3> 九州大学・吉岡教授.” 2015年5月2日. http://toyokeizai.net/articles/-/68379

 



※最後に強調しておきたいことがあります。私は再エネ導入派の立場から環境・エネルギー政策を考察している者であり、民主党を応援しているのではありません。













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